最終更新日:2018/02/07
Syllabus
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概要
対象年度 年度 2020 (週1コマ)通年 開講時限 木3
開講学部・学科等
科目コード 661010800 科目ナンバー
授業名 法女性学
英文授業名 Feminism Legal Studies
担当教員 椎名 規子

授業形態 講義
e-learning利用 その他:
担当形態 単独
関連する授業
当科目履修前に履修して
おくことが望ましい科目
憲法、民法(親族法)、民法(相続法)
後続関連授業
教職課程科目
テーマ・キーワード 男女共同参画・法の下の平等

授業の概要・ねらい いまわが国の家族は、核家族化、少子化、それにともなう高齢化社会、離婚の著しい増加などの急激な変化の中に置かれている。その一方で・男女の不平等や性別役割分業社会は依然として解消されていない。こうした状況においては、急激な社会の変化は、女性・子ども・老人など弱者にひずみを拡大させるにいたっている。たとえば、父親の育児への無関心は、離婚後の養育費の不払いにつながり、離婚後の女性・子どもの生活を危機に陥れている。またこれまで家庭の中の人権侵害は、「法は家庭に入らず」として法的問題と認識されてこなかったが、子どもの虐待や夫による妻への暴力の防止など家庭の中の人権の保障が急務となっている。
 講義では、社会の男女の不平等、性別役割分業社会および家庭の中の人権侵害など現代的な社会問題について法領域の垣根を取り払って考えてみたい。なお、こうした問題を解決するには、国際的流れについての考察は不可欠である。授業では、これらの社会問題について、国際的視点からもわが国の解決の方向性を探る。
到達目標 各々の法領域のはざまの問題を法の垣根を越えて理解する。家族や男女・夫婦の問題について、正確に現状を理解し、かつ法制度がどのように対応しているかを学び、さらに国際的な視点で解決の方向を考察できるようになる。
教科書と準備するもの 授業では、レジュメを配布するので、原則として教科書は指定しない。
参考書 その都度指示する。また授業では新聞記事や資料を配布する。それによりできるだけ抽象的な議論ではなく、社会の現実を把握できるようにしたい。
評価の基準 ①憲法・民法・刑法などの基礎的法的知識が理解されているか
②それぞれの法的知識が有機的に関連づけられて理解されているか
③男女・子ども・家族についての問題が正確に理解されているか
④それらの問題が国際的視野に立って理解されているか
具体的評価方法 期末試験成績(80%)、発言や質問内容などの授業態度(20%)
授業評価アンケート
フィードバック・
受講生へメッセージ
授業アンケートでは、レジュメに記載する分量が多いとの不満が見られる。しかし本講義では、教科書を使用しないため、レジュメに記載する部分が多いことを理解してもらいたい。
単位互換
特記

授業計画
第1回 内容
(法女性学の講義内容についての説明)
法女性学は、法の垣根を越えた授業であり、多角的観点から考察する。そのため憲法・民法・刑法については基本知識を有することを前提とする。そしてそうした基本的知識を有することを前提として、今日的問題について、具体的な事例をまじえて説明する。
第16回 内容
暴力防止のための国際的流れ
  
授業時間外における学修(予習・復習等) 法女性学という新しい分野の学問領域について理解する。これまでの法律学は、男性の視点から法規定がなされたり、また判決が下されていたものがある。こうした法規定や判決について、偏見を除去して法規定や判決を考えることが本講義の目的であることを正確に理解するように復習する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 児童虐待やドメスティック・バイオレンスなど暴力の防止の問題は、国連等の国際機関からの国際的要請でもある。そこで暴力防止についての国際的流れについて学ぶ。
授業実施特記 授業実施特記
第2回 内容
(人権論の歴史)
法女性学という学問分野は、男女平等の思想の発展と深い関係を有する。そのため人権論の歴史を学ぶ。
第17回 内容
子どもの人権
授業時間外における学修(予習・復習等) 近代人権思想の発展について復習する。そのためには授業前に憲法の人権の歴史についてもう一度目を通して予習しておくことが必要である。 授業時間外における学修(予習・復習等) 子どもの人権条約を理解し、憲法上の子どもの人権についての判例や学説を理解する。子どもの人権条約は、憲法・民法・刑法や教育法など多くの法領域に関係する重要な条約である。そのため正確に理解するため復習を完全にしておくことを求める。
授業実施特記 授業実施特記
第3回 内容
(経済・政治・ 社会の変容と家族の歴史)
女性の人権が認められるようになった背景は、経済や政治および社会の変化と密接に結びついている。そこでこれらの経済・政治・社会の変容の歴史を学ぶ。
第18回 内容
児童虐待(1)
  近年、児童虐待の数は著しく増加するに至っている。こうした児童虐待の実態と特徴について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 農業社会から工業社会に至る男女の役割の変化を理解する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 児童虐待を防止するには、児童虐待の実態と特徴について理解することが不可欠である。そのため現状を確実に把握する。
授業実施特記 授業実施特記
第4回 内容
(法の下の平等についての判例と学説の展開)
憲法上の法の下の平等(憲法14条・24条)について、判例や学説がどのような展開を見せているかを学ぶ。
第19回 内容
児童虐待 (2)
  児童虐待防止法について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 憲法14条の法の下の平等および24条の家族における平等についての判例および学説について予習しておく。 授業時間外における学修(予習・復習等) わが国において、児童虐待の防止について、社会が真剣に取り組むようになったきっかけは、児童虐待防止法の制定による。そこで児童虐待防止法を理解する。
授業実施特記 授業実施特記
第5回 内容
(平等を求める国際的流れ(1))
女性の人権の発展は、戦後の国際的流れを考察する必要がある。
第20回 内容
ドメスティック・バイオレンス(1)
 実態と特徴について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 第二次世界大戦後の国連憲章および国際人権規約A規約・B規約さらに女子差別撤廃条約に至るまでの国際的流れについて理解する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 夫婦間の暴力の防止について、まず実態と特徴について理解する。その上で法的対応も変かしていることも学ぶ。かつては、「法は家庭に入らず」として、家族間の問題について国家権力は謙抑的であるべきだとされていた。しかし近年では、夫婦間の暴力は著しい人権侵害であるとの認識に改められている。このような法的状況の変化も学ぶ。
授業実施特記 授業実施特記
第6回 内容
(平等を求める国際的流れ(2))
戦後の国際的流れについては、二回にわたって学ぶ。
第21回 内容
ドメスティック・バイオレンス(2)
 配偶者暴力防止法について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 子どもの権利条約について理解する。子どもの権利条約は、憲法や民法・刑法や教育法など多くの法領域に関係する条約である。きちんと理解するために復習しておくことが必要である。 授業時間外における学修(予習・復習等) 配偶者間の暴力の防止について、わが国では、配偶者暴力防止法の制定が重要なきっかけとなった。ここでは、配偶者暴力防止法について学ぶ。
授業実施特記 授業実施特記
第7回 内容
(日本の女性の戦前・戦後の状況)
日本の女性の置かれた法的地位は、戦前と戦後では大きく転換した。戦後の家族法改正により、女性の法的地位は大きく上昇した。戦前と戦後の女性の地位について学ぶ。
第22回 内容
セクシャル・ハラスメント(1)
セクシャルハラスメントの実態と特徴について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 戦前のわが国の家族法における女性の地位と戦後の家族法改正後の女性の地位について復習する。
授業時間外における学修(予習・復習等) 職場における暴力であるセクシャルハラスメントの定義を理解し、その実態および特徴を把握する。
授業実施特記 授業実施特記
第8回 内容
(女性差別撤廃条約)
わが国の女性の法的対応については、女子差別撤廃条約を考察するのは不可欠である。本講では、女子差別撤廃条約について考察する
第23回 内容
セクシャル・ハラスメント(2)
セクシャル・ハラスメントの判例の展開について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 今日の男女の平等を理解するために、女子差別撤廃条約をきちんと復習する。 授業時間外における学修(予習・復習等) セクシャル・ハラスメントについて定義しているのは、男女雇用機会均等法である。しかしその規定の内容は明確ではなく、判例の展開によって具体化されてきている。そこでセクシャル・ハラスメントの判例の発展と変化を学ぶことにより、セクシャル・ハラスメントの具体的意義を復習しておく。
授業実施特記 授業実施特記
第9回 内容
(女性差別条約を締結するために法改正が必要であった国内法上の問題点)
わが国が女性差別撤廃条約を批准する上では、いくつかの法整備が必要であった。必要とされた法改正について学ぶ。
第24回 内容
性暴力の現状および現行規定の問題点等、性暴力の防止について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) なぜわが国では、女性差別撤廃条約の批准により、法整備が必要であったかを復習しておく。 授業時間外における学修(予習・復習等) わが国性犯罪規定は、旧制度の秩序維持の思想の観点を維持しており、性的自由を保護する規定とはなっていない。わが国の強姦罪規定および強制猥褻罪の規定の問題点を学び、解決についての国際的流れを理解するために復習しておくことを求める。。
授業実施特記 授業実施特記
第10回 内容
(国籍法上の問題点および判例の展開)
国籍法については、二度の大きな改正を経ている。とくに二度目の改正は、法の下の平等についての最高裁の違憲判決をきっかけにしている。そこで本講では、国籍法の流れを学ぶとともに、最高裁の違憲判決をも検討する。
第25回 内容
生殖と女性の人権
授業時間外における学修(予習・復習等) 国籍法についての改正および最高裁の違憲判決について復習する。国籍法についての最高裁の違憲判決は、後の非嫡出子についての民法の相続分規定についての違憲判決につながるものである。きわめて重要な判決なので、きちんと復習する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 近年では、医学の進展に伴い、代理出産など、以前には考えることのできなかった人工生殖の形態が現れるに至っている。こうした人工生殖が女性や子どもに与える問題点について理解する。
授業実施特記 授業実施特記
第11回 内容
(男女雇用機会均等法制定前の裁判所の判例の展開)
わが国が男女雇用機会均等法を制定する以前も、裁判所の判決で、雇用についての雇用者の不当な対応に対して、救済をはかった。そこで、男女雇用機会均等法を制定する前の法の状況を学ぶ。
第26回 内容
高齢化社会と老人の人権(1)
高齢化社会の現状を理解する。
授業時間外における学修(予習・復習等) なぜ、男女雇用機会均等法を制定する必要があったか。すなわち裁判所の判決では救済に限界があったことを理解するために復習しとおく。 授業時間外における学修(予習・復習等) わが国では、他の先進国が経験したことのない高齢化社会を迎えるに至っている。まずわが国の高齢化社会の実態を把握する。さらに高齢者に対する新しい社会理念であるノーマライゼーションの考え方を学ぶ。
授業実施特記 授業実施特記
第12回 内容
(男女雇用機会均等法(1))
男女雇用機会均等法は、何度か改正を経ている。そこで二回にわたって改正点を学ぶ。
第27回 内容
高齢化社会と老人の人権 (2)
高齢者虐待の現状および実態を学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 男女雇用機会均等法の制定時の内容を理解する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 高齢者に対する虐待が近年増加するに至っている。高齢者の虐待は、児童虐待とは別な問題を持っている。すなわち金銭の搾取などの経済的虐待である。また意図的自己放棄ともいえる自殺率の高さも問題である。こうした高齢者虐待の実態および問題点を理解する。
授業実施特記 授業実施特記
第13回 内容
(男女雇用機会均等法(2))
男女雇用機会均等法は、何度か改正を経ている。そこで二回にわたって改正点を学ぶ。
第28回 内容
高齢化社会と老人の人権(3)
高齢者虐待防止法について学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) 男女雇用機会均等法の改正について理解する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 高齢者虐待防止法の制定により、法的また社会的にも高齢者虐待の問題が認知されるようになった。今回は、高齢者虐待防止法を理解するように復習する。
授業実施特記 授業実施特記
第14回 内容
(わが国の女性の労働の問題点)
男女の賃金格差や非正規労働の増大など、さまざまな要因により、女性の貧困化が問題となっている。この問題は男女雇用機会均等法が制定されても解決されていない問題である。本講では、女性の貧困化の問題について学ぶ。
第29回 内容
高齢者または痴呆老人の財産の保護
近年、民法では、高齢者の判断能力の減退により、詐欺や錯誤など、高齢者の財産の保護のため、成年後見制度が制定された。
授業時間外における学修(予習・復習等) 男女雇用機会均等法が制定されても、女性が低賃金労働や非正規労働を強いられている社会的実態およびその問題点について、社会構造の視点から学ぶ。 授業時間外における学修(予習・復習等) 高齢者の財産の保護のための成年後見制度について理解するように復習する。。
授業実施特記 授業実施特記
第15回 内容
(まとめ)
法女性学は、さまさまな領域と関係する問題である。ここでは春期で学んだ内容を全体的に考察する。
第30回 内容
まとめ
授業時間外における学修(予習・復習等) これまで勉強した前期の問題を総合的に復習する。 授業時間外における学修(予習・復習等) 暴力の原因は、単一ではなく、また児童虐待、配偶者間の暴力、高齢者虐待は、相互に深く結びついている。こうした暴力の連鎖の構造を確実に理解するように復習する。さらに近年に暴力防止のために制定されている児童虐待防止法、配偶者暴力防止法および高齢者虐待防止法の内容を確実に理解する。そしてこうした暴力防止のための法整備は、国連等の国際機関が各国政府に求めている国際的な流れであることも理解する。
授業実施特記 授業実施特記