授業の概要・ねらい |
男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法をはじめとして、社会制度が男女平等を求めて変革しつつあるが、世界経済フォーラムが2020年に発表した「男女格差指数国別ランキング」によると、日本は調査対象153か国中121位である。この現状を認識することなく、男女格差(差別)に無頓着に生きることはできない。そこで本講義では、現代日本社会のジェンダー構造を理解するとともに、ジェンダー論という知的領野に踏み出すための入門の案内となることを目指します。
言うまでもなく、ジェンダー論は、男女共同参画社会推進や性による差別の廃絶を目指す課題と深く関わる研究領域ですが、ジェンダー論を構成する思想的・理論的奥行きは深く、そのエッセンスを掴むことは容易ではありません。とりわけ、1990年代以降、ジェンダー論は高度で難解なものになっています。とりわけ、「ポスト構造主義」という思想潮流に影響を受けたジェンダー論の理論的進展は目覚ましいものがあります。
本講義の前半では、改めてセックスとジェンダーの区分をとらえなし、性に関する知識やカテゴリー自体がジェンダーであることを解き明かしていきます。なぜ性別のことをセックスと呼ぶのではなく、ジェンダーと呼ぶのか、社会における性現象にジェンダーという名前を与えることで何が見えてくるのか。また、生物学的な性別をセックス、文化的・社会的な性別をジェンダーと呼ぶような旧来的な呼び方がもたらしてきたものはなんであるのかなどについて考察していきます。
後半では、個別具体的な性現象にかかわる問題群を取り上げながら、ジェンダー概念の現実認識のための道具としての有効性を確認し、また、その道具を用いて現実を切り取る能力を習得することを目指していきます。 |
到達目標 |
1.ジェンダー論を構成する思想的背景、理論的枠組を習得することができる。
2.ジェンダーの視点をとおして現代社会の抱える課題を析出することができる。
3.男女の関係の新しいあり方を具体的に構想する能力を養う。 |
教科書と準備するもの |
特に使用しない。
講義内容に合わせて適宜レジュメや関連資料を配布する。 |
参考書 |
伊藤公雄『男性学入門』作品社、1996
赤川学『子どもが減って何が悪いか!』ちくま新書、2004
加藤秀一・他『ジェンダー(図解雑学)』ナツメ社、2005
加藤秀一『知らないと恥ずかしいジェンダー論入門』朝日出版社、2006
江原由美子・山崎敬一編『ジェンダーと社会理論』有斐閣、2006
伊藤公雄・他『女性学・男性学』有斐閣アルマ、2011
千田有紀・中西祐子・青山薫『ジェンダー論をつかむ』有斐閣、2013
木村涼子・他『よくわかるジェンダー・スタディーズ』ミネルヴァ書房、2013
その他、講義の進度に応じて提示していく。 |
評価の基準 |
学期末レポートとリアクション・ペーパーを用いて、以下の到達目標を達成しているかどうかを判断する。
1.ジェンダー論を構成する思想的背景、理論的枠組を習得することができる(60%)。
2.ジェンダーの視点をとおして現代社会の抱える課題を析出することができる(70%)。
3.男女の関係の新しいあり方を具体的に構想する能力を養う(70%)。 |
具体的評価方法 |
具体的には、学期末レポート60%と、毎回義務付けるリアクション・ペーパー40%(平常点:講義の感想や質問等)との総合評価とする。なお、私語など授業妨害とみなされる行為は、成績評価に反映されるので注意すること。 |
第1回 |
内容
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ガイダンス 授業の進め方、学生に求めるものについて説明する。 授業全体のアウトラインを説明する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)シラバスに目を通しておくこと。 |
授業実施特記 |
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第2回 |
内容
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性別をとらえなおす――「性現象」をつかむための三つの視座 セックスとジェンダーの区分をとらえなおし、性にかんする様々な知識やカテゴリー自体がジェンダーであることを解き明かす。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)なぜ、ジェンダーという概念が必要になったのか、それによって何が新たに問題化されるようになったのか、まとめておく。 |
授業実施特記 |
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第3回 |
内容
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「性差」と「性役割」 そもそも性差とは何を意味しているのか、性差研究の最前線を豊富な映像資料をとおして読み解く。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)性差と性役割を無媒介に接合することで生じる問題群をまとめておく。 |
授業実施特記 |
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第4回 |
内容
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「性役割」と「らしさ」の罠 「性差」と「性役割」はまったく別の問題であるころを論じる。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)「男(女)なら男(女)らしくしなさい」の論理的矛盾を説明できるようにしておく。 |
授業実施特記 |
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第5回 |
内容
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制度としての家族 近代家族を支える、様々な物語、つまり、恋愛、母性、家庭をめぐる物語について検討する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)主婦、性別役割分業、ロマンティック・ラブ・イデオロギーなどのキーワードを用いて近代家族を描写できるようにしておく。 |
授業実施特記 |
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第6回 |
内容
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「性別」はなぜ「男」と「女」の2つに分類されるのか? 性別の根拠を問い直すことをつうじて、性別の自明性を揺るがす。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)私たちがどんなやり方で性別を根拠づけているのか、説明できるようにしておく。 |
授業実施特記 |
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第7回 |
内容
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「セクシュアリティ」の社会的編成 〈性〉が禁忌の対象として抑圧されるのはなぜなのか? あるいは、にもかかわらず、なぜ〈性〉情報が氾濫してるのだろうか? について考察する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)性へと向かう私たちのまなざしにどのようなものか整理しておく。 |
授業実施特記 |
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第8回 |
内容
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男女共同参画社会の規範性 なぜ男女共同参画社会が必要なのか、成立の社会的背景を確認しつつ、その可能性と課題について検討する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)男女共同参画社会基本法の前文、とりわけ「但し書き」の意味ついて説明できるようにしておく。 |
授業実施特記 |
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第9回 |
内容
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男女共同参画社会の実現が少子化を防ぐのか?(1) 赤川学の『子どもが減って何が悪いか!』を軸に、男女共同参画社会と少子高齢社会の関係を問い直す。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)男女共同参画は出生率回復に有効という学説は妥当かどうか、説明できるようにしておく。 |
授業実施特記 |
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第10回 |
内容
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男女共同参画社会の実現が少子化を防ぐのか?(2) なぜ、子どもを産まなくなったのか、少子化現象の原因について解説する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)少子化現象のメカニズムについて説明することができるように整理しておく。 |
授業実施特記 |
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第11回 |
内容
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ジェンダーの平等に対するバックラッシュ なぜ日本社会で男女平等の理念が浸透しないのか、その原因について考察する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)1990年代以降のジェンダー・バックラッシュ勢力の動きと、対抗勢力の戦略について整理しておく。 |
授業実施特記 |
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第12回 |
内容
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男性学・男性性研究への招待(1) 「男性問題」という「問題」系は成り立ちうるのか?考察する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)男性学の立場やものの見方を整理しておく。 |
授業実施特記 |
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第13回 |
内容
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男性学・男性性研究への招待(2) 男社会のなかで女性差別が問題化されるが、男性は自らの生き方に疑問を抱いてはいないだろうか。男性問題の諸相をとおして、男らしさの神話を問い直す。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)主夫、イクメン、草食系男子などの形容は、男らしさの神話を突き崩すものなのか、その可能性について考察しまとめておく。 |
授業実施特記 |
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第14回 |
内容
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授業全体のフォローアップ |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(復習)全授業内容を振り返り、ジェンダーの視点をとおした現代日本社会の様相を自分なりに描くことができるように、要点をまとめなおしておく。 授業実施特記
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授業実施特記 |
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第15回 |
内容
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総括(予備日) |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)レポート作成に向け、授業内容全体を自分なりに整理する。 |
授業実施特記 |
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