最終更新日:2020/01/02
Syllabus
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概要
対象年度 年度 2020 (週1コマ)秋期 開講時限 火2,火3
開講学部・学科等 法・政経・理工・文・経営
科目コード 110101800 科目ナンバー LAH01104
授業名 日本史B
英文授業名 Japanese History B
担当教員 長島 淳子

授業形態 講義
e-learning利用 その他:
担当形態 単独
関連する授業
当科目履修前に履修して
おくことが望ましい科目
後続関連授業 日本史A(長島淳子)
教職課程科目
テーマ・キーワード 日本近世史・近代史・家族史・女性史・ジェンダー

授業の概要・ねらい 家族や結婚の歴史を学ぶなかから日本史、特に近世に焦点を当てて読み直します。従来の政治・経済史中心の日本史では見落とされがちな家族や男女(夫婦)関係は、その時代の政治経済・社会・文化・思想などの様々な要素を反映する重要なテーマです。過去の時代の恋愛・結婚・離婚の様相、また個人史を通して先人の生き方を知り、現代の私たちの社会や家族を取り巻く環境や男女(夫婦)の関係性について考える力を養います。
到達目標 近世の家族や恋愛、結婚の特徴を理解し、男女(夫婦)間にある差異(ジェンダー)や差別の存在を認識する。とくに近世の「家」や家父長制の強大さ、家族のあり方を理解する。また、そこから現代社会の様々な課題、問題点、改善策などを見出す力を養う。
教科書と準備するもの 服藤早苗監修 伊集院葉子・栗山圭子・長島淳子・石崎昇子・浅野富美枝著『歴史のなかの家族と結婚 --ジェンダーの視点から』森話社、2011年(1900円+税)
教科書は授業時に必ず持参のこと。
参考書 辻浩和・長島淳子・石月静恵編著『女性労働の日本史』勉誠出版、2019年
長島淳子『江戸の異性装者たち―セクシュアルマイノリティの理解のために―』勉誠出版、2017年
長島淳子『幕藩制社会のジェンダー構造』校倉書房、2006年
総合女性史研究会編『時代を生きた女たち-新・日本女性通史』朝日選書、2010年
総合女性史研究会編『日本女性の歴史―性・愛・家族』角川書店、1992年
    〃    『日本女性の歴史―女のはたらき』角川書店、1993年
    〃    『日本女性の歴史―文化と思想』角川書店、1993年
評価の基準 ・近世の社会状況、家族・恋愛や夫婦のあり方が説明できること。
・史料が読めること、またそれを理解し、具体的に論述できること。
・自分の考えをしっかり持ち、発言できること。
具体的評価方法 ・定期試験の60点以上に単位を与える。
・授業時の発言など積極的な授業態度を考慮する。
・試験は論述問題を中心に、受講生の授業の理解度を評価する。
・試験時の教科書・ノート・参考書などの持ち込みは不可。
・評価割合は、定期試験(80パーセント)授業態度(20パーセント)
授業評価アンケート
フィードバック・
受講生へメッセージ
高校までの歴史と違った観点で日本史を学ぶのが興味深いとの感想が多い。今年度もその観点を重視したい。疑問や意見があれば、授業中でも授業後でも積極的に質問・発言してください。板書が多いのでしっかりノートに取ってください(スマホ等で写真を撮る場合は許可を得ること)。
単位互換
特記

授業計画
第1回 内容
ガイダンス
授業の進め方。
家族や結婚の歴史をどのように捉えるか。女性史・ジェンダー概念について。 
現代の家族・男女の恋愛・結婚の抱える諸問題などについて説明する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の近世の「はじめに」を読んでおく。
(復習)授業内容のまとめ、分からない歴史用語・記述を調べる。
授業実施特記
第2回 内容
第1節 性・愛・結婚
身分によるさまざまな結婚のかたち/縁組許可制の武士の結婚
武士の結婚について、「武家諸法度」を素材に私婚禁止と縁組許可制が出された背景を考える。大坂の陣後の大名統制策とその後の旗本・御家人の支配強化の動向を理解する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第3回 内容
第1節 性・愛・結婚
頼山陽とお淳の結婚/結婚とその破綻・再婚へ
武士の結婚の事例として、儒者・漢詩人の頼山陽の結婚を取り上げる。山陽の両親の「春水日記」「梅颸日記」を素材に、山陽の出生から結婚までを辿り、縁組許可制の実態を学ぶ。また、お淳との結婚の破綻から再婚後の充実した夫婦・家族の姿を追う。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第4回 内容
第1節 性・愛・結婚
上層農関口ちゑの結婚/花嫁修業の武家奉公
農民の結婚の事例として、江戸近郊農村の名主の娘の結婚を取り上げる。父の記録した「関口日記」を素材に、豪農の娘が花嫁修業の武家奉公を経て一人前に育つ姿を追う。また、弟たちの教育内容との差異から男子・女子教育のジェンダーを考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第5回 内容
第1節 性・愛・結婚
結婚の過程と嫁入り婚の儀式/見合いと結婚仲介業
「関口日記」に沿って、武家奉公後の関口ちゑが結婚仲介業の紹介により見合いを重ね、結婚に至る過程を追う。また、結納の内容や婚礼儀式のあり方を学び、花婿方の父母を真の親とみなす近世の嫁入り婚の特徴を認識する。
          
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第6回 内容
第1節 性・愛・結婚
おちゑの離婚と大奥女中奉公
「関口日記」に沿って、関口ちゑの夫の病死とその後の弟との再婚、離婚の経過を追う。親権のない妻の立場や、大奥女中奉公によって身を立てていく近世女性の生き方を学ぶ。大奥女中奉公が上層農女性にとって最高のキャリアになったことを認識する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第7回 内容
第1節 性・愛・結婚
身分・階層差による夫婦関係/上級武士・中下級武士の場合
将軍家や大名家は一夫一婦制を基本にするが、多くの側室や妾により家維持が保たれたことを学ぶ。また、大奥の役割について考える。一方、「柏崎日記」を読み、中下級武士の夫婦の相互扶助の暮らしぶりにも留意する。
  
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第8回 内容
第1節 性・愛・結婚
天皇家の場合
天皇家の夫婦関係を考える。近世では皇后となる中宮宣下が経済的事情で行われず、女御が正妻となったが、天皇はその他に女官の上位者と性関係をもった。女官制度は将軍家大奥の基となるが、こうした夫婦のあり方を認識しながら、近世に2人立った女性天皇についても考える。 
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第9回 内容
第1節 性・愛・結婚
離婚の実態と縁切寺/工藤あや子の結婚観
近世社会の離婚・再婚率の高さを認識する。離婚原因の第一が不妊であることを知り、妻の立場や夫婦関係を家制度を通して考える。また、そうした社会にあって恋愛結婚への憧憬や、夫婦両者への姦通罪の適用などを著書に記した工藤あや子の生き方を学ぶ。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第10回 内容
第1節 性・愛・結婚
庶民の離婚の作法と縁切り寺
庶民の離婚の作法としての離縁状(三行半)について学ぶ。典型的な離縁状の史料を取り上げて解読し、記述内容の特徴について知る。また、夫から妻へ渡される離縁状の役割について認識する。妻側の離婚成立のための縁切り寺とその機能についても確認する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第11回 内容
第1節 性・愛・結婚
遊廓の成立と私娼/吉原遊廓
徳川家康の江戸入府により江戸の城下町建設が始まるが、町の特性と遊廓成立までの経過を追う。吉原遊廓の機能や幕府との関係、および遊女奉公の仕組み、近世の遊女の特徴などを学ぶ。また、吉原の地理的環境や遊廓内の町の構造、『吉原細見』などを確認する。


授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第12回 内容
第1節 性・愛・結婚
岡場所/増加する飯盛女
吉原遊廓の成立による公娼制度から外れた私娼につて学ぶ。岡場所と呼ばれ取り締まりの対象となった深川・根津・音羽・三田などの状況と、さらに下位の売女の置かれた環境を知る。また、街道筋の宿場で性を売った飯盛女の奉公内容について確認する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第13回 内容
第1節 性・愛・結婚
江戸の同性愛と異性装者/陰間と陰間茶屋
歌舞伎の舞台子・陰子などから発生した陰間について学ぶ。天保改革で陰間茶屋が禁止措置とされても秘密裏に遺った陰間茶屋や陰間の実態を分析し、客と陰子の関係や客層について説明する。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第14回 内容
第1節 性・愛・結婚
男装の竹次郎こと、たけ
異性装の者に対する幕府の対応について、男装をし続けたたけという人物に焦点を当てて考える。単に男装・女装という括りではなく、トランスジェンダーとしての異性装の問題まで考察する。LGBTの現代的課題にも踏み込む。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。
(復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。
授業実施特記
第15回 内容
授業のまとめと試験
授業を通して学んだことをそれぞれが発言し、クラスで討論をする。とくに受講以前と以後の考え方の変化等に留意し、互いに切磋琢磨しながら授業の意義を考える。
論述試験の実施。
授業時間外における学修(予習・復習等) (予習)授業を通して理解できたことをまとめる。
(復習)他の受講生の意見を思い起こし、自分の考えを再構築する。
授業実施特記