授業の概要・ねらい |
家族や結婚の歴史を学ぶなかから日本史を読み直します。従来の政治・経済史中心の日本史では見落とされがちな家族や男女(夫婦)関係は、その時代の政治経済・社会・文化・思想などの様々な要素を反映する重要なテーマです。過去の時代の恋愛・結婚・離婚の様相、また個人の歴史を通して先人の生き方を知り、私たちの社会や家族を取り巻く環境や男女(夫婦)の関係性について考える力を養います。テーマに応じて現代の社会問題も解説します。 |
到達目標 |
古代の家族や恋愛、結婚の特徴を理解し、その基本である男女(夫婦)の対等性の存在を認識する。また、そこから現代社会の様々な課題、問題点、改善策などを見い出す力を養う。 |
教科書と準備するもの |
服藤早苗監修 伊集院葉子・栗山圭子・長島淳子・石崎昇子・浅野富美枝著『歴史のなかの家族と結婚 ――ジェンダーの視点から』森話社、2011年(1900円+税)
・教科書は授業時に必ず持参すること。 |
参考書 |
辻浩和・長島淳子・石月静恵編著『女性労働の日本史』勉誠出版、2019年
長島淳子『江戸の異性装者―セクシュアルマイノリティの理解のために―』勉誠出版、2017年
長島淳子『幕藩制社会のジェンダー構造』校倉書房、2006年
総合女性史研究会編『時代を生きた女たち-新・日本女性通史』朝日選書、2010年
総合女性史研究会編『日本女性の歴史―性・愛・家族』角川書店、1992年
〃 『日本女性の歴史―女のはたらき』角川書店、1993年
〃 『日本女性の歴史―文化と思想』角川書店、1993年
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評価の基準 |
・古代の社会状況、家族形態・恋愛や夫婦のあり方が説明できること。
・史料が読めること、またそれを理解し、具体的に論述できること。
・自分の考えをしっかり持ち、発言できること。 |
具体的評価方法 |
・定期試験の60点以上に単位を与える。
・授業時の発言など積極的な授業態度を考慮する。
・試験は論述問題を中心に、受講生の授業の理解度を評価する。
・試験時の教科書・ノート・参考書などの持ち込みは不可とする。
・評価割合は、定期試験(80パーセント)授業態度(20パーセント) |
第1回 |
内容
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ガイダンス 授業の進め方。 家族や結婚の歴史をどのように捉えるか。女性史・ジェンダー概念について。 現代の家族・男女の恋愛・結婚の抱える諸問題などについて説明する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の古代の「はじめに」を読んでおく。 (復習)授業内容のまとめ、分からない歴史用語・記述を調べる。 |
授業実施特記 |
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第2回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 恋イコール結婚の時代/万葉の恋 『万葉集』に収録された和歌を素材に、古代の恋愛の純粋性・直情性を認識する。性関係決定権は男女ともに有すること。また、結婚は当事者に決定権があり、親の関与の無かったことなどを学ぶ。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第3回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 名告りとヨバイ 『万葉集』の和歌を例に、古代の男女の恋愛や結びつきの独特な方法を学ぶ。 女性の名告りが男女の恋愛の第一段階であり、名告りが得られない場合、男性は引き下がること、また、名前を呼び合うことで愛を確かめた事実を認識する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第4回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 母の許しと共同体の承認/「人目」「人言」の意味 『万葉集』の和歌を素材に母の娘への監視の目の強さを知り、古代の母の社会的位置を考察する。また、古代の若い恋人にとって、他人の目や周囲の噂が非常に厄介であったことを和歌から学ぶ。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第5回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 通い婚から同居へ/石川内命婦の結婚生活 『日本霊異記』にみえる石川内命婦と大伴安麿呂の夫婦関係を考察する。結婚当初は別居であったものが、次第に同居に移行する過程を追う。また、子どもは母親の下で養育される実態を学ぶ。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第6回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 妻たちの序列/姦通の不在から成立へ 対遇婚下では夫婦ともに複数の恋人がいたが、妻や妾は対等であり、序列の無かったことを学ぶ。また、8~9世紀にみられなかった姦通が、10世紀になり家父長制家族の成立とともに出現することを認識する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第7回 |
内容
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第1節 古代の性・愛・結婚 離婚/性への女の拒否権/戦場レイプ 通い婚の時代には妻の性関係拒否権の行使により離婚が成立したことを学ぶ。『播磨国風土記』などの地名伝承からもそれを補足。また戦場においてレイプが不在であったことを認識し、レイプの本質を考える。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第8回 |
内容
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第2節 家族・生活 家父長制の未成立と双系的・両属的社会 古代家族の特徴である母子紐帯の強い実態を学ぶ。『播磨国風土記』、『万葉集』の記述を参照に母系・父系、またはその両者への子どもの帰属(双系)の様相、さらに戸籍の記述を例に認識する。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第9回 |
内容
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第2節 家族・生活 母の姓から父の姓へ/夫婦の姓 8世紀にみられる母の姓を子供が名乗る「冒母姓」につて学ぶ。この冒母姓が次第に父の姓を名乗る傾向に変化してくる過程を追う。また、現在の民法にある夫婦が同一の姓(名字)を名乗る規定が、古代(中世・近世も)においては夫婦別姓であったことを学ぶ。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第10回 |
内容
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第2節 家族・生活 里刀自、家刀自の指揮下での共同労働/家刀自としての母 古代の結婚において当事者の意思の他に母の同意が必要であったことを認識する。家族の中での母親の位置の大きさを群馬県高崎市の「金井沢碑」を素材に調べ、母が家刀自として家経営に参与していた実態を学ぶ。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第11回 |
内容
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第2節 家族・生活 村を仕切る里刀自/妻の田を刈る男たち 村内でリーダーシップをもっていた女性の動向を調べる。素材は福島県いわき市出土の「郡符木簡」である。郡司職田の田植えを命じられた里刀自が、男女の農民を率いて田植えを遂行する姿を史料から認識する。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第12回 |
内容
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第2節 家族・生活 共同労働と性別分業/働く子ども 古代の性別役割分業の実態を考察する。男女・子ども、それぞれの労働の種類や特徴を確認する。但し、男女の役割分業が男尊女卑思想に基づく固定的性別役割ではなかったことに留意する。古代における男女の対等性に裏打ちされた分業であることを学ぶ。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第13回 |
内容
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第2節 家族・生活 経営手腕を振るった富豪の刀自たち/富豪の経営手法 『日本霊異記』にある讃岐国美貴郡の大領の夫婦を素材に、夫婦別財産・別経営に基づく家経営のあり方を学ぶ。夫婦が別個に資産を運用し蓄財する姿を追いながら、夫婦対等の関係性を認識する。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第14回 |
内容
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第2節 家族・生活 家長と家室/女性の財産権と授位 『日本霊異記』を素材に、家長(夫)と家室(妻)が協力して家経営に当たる姿を確認する。必ずしも男性が家経営のリーダーシップをもっていたわけではなく、力量のある方が対応していた実態を学ぶ。
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授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)教科書の次単元を読み、分からない用語・記述等を調べる。 (復習)授業内容をまとめ、疑問点などを整理する。 |
授業実施特記 |
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第15回 |
内容
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授業のまとめと試験 授業を通して学んだことをそれぞれが発言し、クラスで討論をする。とくに受講以前と以後の考え方の変化等に留意し、互いに切磋琢磨しながら授業の意義を考える。 論述試験を実施。 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
(予習)授業を通して理解できたことをまとめる。 (復習)他の受講生の意見を思い起こし、自分の考えを再構築する。 |
授業実施特記 |
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