授業の概要・ねらい |
資本のグローバル化は一般的な傾向である。圧倒的な力を持ってわれわれの生活の隅々にまで拡大し、なお、深化している。様々なレベルにおける資本に対する調整作用が不十分なために、不毛なグローバリズム・対・反グローバリズムの対立構図が際立っている。ジャック・アタリが予見したように、世界システムは新たな段階に突入しつつある。工場の生産装置・物流現場をインターネットで連環し、人工知能(AI)が自己管理する「第四次産業革命」が将来する前夜にある。世界レベルの市民社会の調整が必須である。本論では資本主義の制度的基礎とグローバル化による現代資本主義の技術的、社会的な劇的変容(労働雇用システムの変容・企業統治の変化・グローバル化によるセーフティーネットの再編・「経済成長の限界」と環境問題)を扱う。特論では、本論で示されたグローバル資本主義の問題群が集約して現れる経済特区において多国籍企業による海外直接投資の行動を分析する。国家戦略特区の性格についても言及したい。最終回の事例研究では、再生医療(iPS細胞等)に関連して神戸医療産業都市の問題点を検討する。
|
到達目標 |
資本主義の制度的基礎とグローバル化による現代資本主義の劇的変容を理解し、経済格差問題の根源である世界資本主義システムのアーティキュレーション構造を理解し、説明できることが目標となる。 |
教科書と準備するもの |
使用しない。ただし、毎回、レジュメを配布する。 |
参考書 |
高橋誠『世界資本主義システムの歴史理論』世界書院、1998年。
若森章孝他『入門・政治経済学』ミネルヴァ書房、2007年
周牧之『中国経済論』日本経済評論社、2008年
ジャック・アタリ著、林昌宏訳『21世紀の歴史 未来の人類から見た世界』作品社、2009年
高橋誠「神戸医療産業都市と市民社会」、内藤光博編『東アジアにおける市民社会の形成 人権・平和・共生』専修大学出版局、2013年、所収
高草木光一編『思想としての「医学概論」 今「いのち」とどう向き合うか』岩波書店、2013年
日経ビジネス編『日本経済入門』日経BP社、2014年
青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』筑摩書房(ちくま新書)、2014年
水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』集英社(新書)、2017年
NHKスペシャル「人体」取材班編『人体の神秘の巨大ネットワーク』(第1巻[プロローグ]神秘の巨大ネットワーク/[第1集]腎臓が寿命を決める)、日本書籍、2017年
渡辺正峰『脳の意識 機械の意識:脳神経科学の挑戦』中央公論新社(新書)2017年
斎藤元章・井上智洋『人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点』PHP研究所(PHP新書)2017年
ガイ・スタンディング著、池村千秋訳『ベーシックインカムへの道』プレジデント社、2018年 |
評価の基準 |
資本主義の制度的基礎とグローバル化による現代資本主義の劇的変容、すなわち労働雇用システムの変容、企業統治の変化、グローバル化によるセーフティーネットの再編、「経済成長の限界」と環境問題を理解しているか否かを基準にして評価する。 |
具体的評価方法 |
授業貢献度を重視し、期末試験の実施等により、総合的に成績を評価する。なお、期間中に1回、主題に関する新聞記事を読み、小論文を提出して戴く。可能であれば、それにもとづいて、討論会を行いたい。講義の出席者のみに資料・重要事項を示したプリント教材を配布する。なお、3分の2以上の出席を評価の前提条件とすることは言うまでもない。前期定期試験(80%)と小論文(20%)の実施により、総合的に成績を評価する。 |
第1回 |
内容
|
講義計画と講義内容の説明 本論:グローバル資本主義の基礎理論 ①資本主義の段階論(国家と経済)と文明史的段階論(「第四次産業革命」の意味) |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:「講義の計画と内容」を通覧し、グローバル経済における国家の役割について考察しておくこと 復習:講義の計画と内容を再度、熟読すること |
授業実施特記 |
|
第2回 |
内容
|
②新自由主義の限界と超克シナリオ
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:新自由主義について考察しておくこと 復習:サッチャー・レーガン・中曽根イズムの経済史的意味について復習しておくこと |
授業実施特記 |
|
第3回 |
内容
|
③生産システムの分析 テイラーシステム・フォードシステム・トヨタシステム <補足> 現代的展開としての製品・部品とAI装置が連係して仕事を達成する「思考する工場」
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:トヨタシステムについて考察しておくこと 復習:「思考する工場」の現場を想像すること |
授業実施特記 |
|
第4回 |
内容
|
④生産システムの変容 情報通信技術の革新による製造過程と労働形態の変化:ドイツの「インダストリー4.0」や日本の「ソサエティー5.0」構想
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:インターネットとAI の製造業への導入による労働形態の劇的変容について考えておくこと 復習:生産・労働形態の激変に伴う社会的変化について熟考すること |
授業実施特記 |
|
第5回 |
内容
|
⑤グローバル化における重層的接合構造と制度補完性 <補足> グローバル化とグローバリズム |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:グローバル経済における「制度」の存在について考えておくこと 復習:レジュメを再読し、経済学における制度補完性の重要性を認識すること |
授業実施特記 |
|
第6回 |
内容
|
⑥労働の規制緩和と調整政策 <資料> アベノミクスとフレキシキュリティモデル
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:労働の規制緩和について考察しておくこと 復習:フレキシキュリティモデルを把握すること |
授業実施特記 |
フレキシキュリティモデルの理解の定着 |
第7回 |
内容
|
⑦雇用システムの変容
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:あらかじめ配布した雇用システム変容の事例に関するレジュメを熟読しておくこと 復習:雇用システム変容の光と影について考察 |
授業実施特記 |
|
第8回 |
内容
|
⑧コーポレート・ガバナンス(企業統治)の展開
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:あらかじめ配布した企業統治の綻びに関するレジュメを熟読しておくこと 復習:企業統治の弛緩と歪みに伴う問題点について熟慮すること |
授業実施特記 |
|
第9回 |
内容
|
⑨グローバル化とセーフティーネット再編の対抗 <資料> 「ベーシックインカム」(スイス等)導入の是非 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:ベーシックインカム導入のメリットとデメリットについて考えておくこと 復習:レジュメを再読し、沈思黙考すること |
授業実施特記 |
|
第10回 |
内容
|
⑩「経済成長の限界」と環境問題の超克
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:「経済成長の限界」と環境問題について自分の考えをまとめておくこと 復習:経済成長率の概念と経済成長の質について再検討し、自分の考えを整理しておくこと
|
授業実施特記 |
課題:「経済成長の限界(ないしは経済成長の持続)」に関する小論文の提出 |
第11回 |
内容
|
特論:世界資本主義システムの歴史構造分析 ①多国籍企業と経済特区・輸出加工区・構造改革特区・復興特区・国家戦略特区
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:国家戦略特区について調べておくこと 復習:国家戦略特区の本質的意味について考察すること |
授業実施特記 |
|
第12回 |
内容
|
②海外直接投資型経済特区の現状
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:海外直接投資の概念について調べておくこと 復習:海外直接投資型経済特区のグローバル経済と国内経済への相互作用について考察 |
授業実施特記 |
|
第13回 |
内容
|
③事例研究:神戸医療産業都市(バイオ医療産業のグローバル拠点化と市民社会の問題)
|
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:あらかじめ配布した「神戸医療産業都市」のレジュメを熟読しておくこと 復習:バイオ医療産業のグローバル拠点化と市民社会の問題点を考えること |
授業実施特記 |
|
第14回 |
内容
|
討論会:「神戸医療産業都市」とアベノミクスにおける国家戦略特区の特質について討論 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:「神戸医療産業都市」と国家戦略特区について考察しておくこと 復習:神戸医療産業都市の戦略的意義について熟慮しておくこと |
授業実施特記 |
討論会 |
第15回 |
内容
|
主要論点の検討 |
授業時間外における学修(予習・復習等) |
予習:討論会におけるさまざまな見解を再考し、各自、比較考量すること 復習:討論会の成果を各自確認し、他に学ぶこと |
授業実施特記 |
|