最終更新日:2018/04/04
Syllabus
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概要
対象年度 年度 2018 (週1コマ)春期 開講時限 木3,木4
開講学部・学科等 法・政経・文・経営
科目コード 120101700 科目ナンバー LAS01701
授業名 社会科学概論A
英文授業名 Introduction to Social Science A
担当教員 高橋 誠

授業形態 講義
e-learning利用 その他:
担当形態 単独
関連する授業
当科目履修前に履修して
おくことが望ましい科目
後続関連授業
教職課程科目
テーマ・キーワード 演繹法 帰納法 価値判断論争 可知論 不可知論 複雑系 初期化 市民社会 三審級の重層的決定 コーエンモデル 経済格差 貧困 IoT ビッグデータ AI ネットワーク

授業の概要・ねらい 春期のテーマは社会科学の方法と対象および市民社会論である。グローバル資本主義のネガティブな側面は「経済成長の限界」と環境問題に象徴的に現れ、貧困問題を世界的規模で拡大深化させている。それへの対抗として、社会体制を貫く普遍的価値としての市民社会あるいは市民的社会意識(自由・平等・公平・公正・自立・自治・共生)の重要性が問われて既に久しい。グローバル資本主義は今日、IoT、ビッグデータ、AIに技術的基礎を置く「第四次産業革命」の直前にある。フラットな社会か、あるいは両極化がさらに拡大する社会かの特異点に立たされている。したがって、前半では社会科学諸領域を貫くさまざまな社会科学の方法論、すなわち経験論、可知論・不可知論、記号論、現象学、複雑系、初期化、ネットワーク化等の有効性を検証し、その成果を基礎に、後半では調整機能としてのグローバル市民社会を展望しつつ、西欧および日本における市民社会の理論を検討する。
到達目標 経験論、可知論・不可知論、現象学、複雑系、初期化、ネットワーク化などの社会科学の方法論と市民社会の世界史的意味を理解し、説明できることが目標となる。
教科書と準備するもの なし。
参考書 高橋誠「神戸医療産業都市と市民社会」、内藤光博編『東アジアにおける市民社会の形成 人権・平和・共生』専修大学出版局、2013年所収
内田義彦『社会認識の歩み』岩波書店(新書798)1971年。
篠原敏雄『市民法学の可能性』頸草書房、2003年。
植村邦彦『市民社会とは何か 基本概念の系譜』平凡社(新書559)、2010年
川勝平太『「鎖国と資本主義」』藤原書店、2012年
重田園江『社会契約論 ホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ』筑摩書房(新書1039)
2013年
高草木光一編『思想としての「医学概論」 今「いのち」とどう向き合うか?』岩波書店、2013年
NHKスペシャル「人体」取材班編『人体の神秘の巨大ネットワーク』(第1巻「[プロローグ]神秘の巨大ネットワーク/[第1集]腎臓が寿命を決める)、東京書籍、2017年
渡辺正峰『脳の意識 機械の意識:脳神経科学の挑戦』中央公論新社(新書)、2017年
評価の基準 国内外のさまざまな社会科学の方法論や市民社会の歴史的意味と問題点を理解しているか否かを基準にして評価する。
具体的評価方法 授業貢献度を重視し、小論文の提出と期末試験の実施等により総合的に成績を評価する。講義の出席者のみに資料・重要事項を示したプリントを配布する。期間中に講義の主題に関する新聞記事あるいは資料を読み、各自の見解を小論文として提出して戴く。履修者が少人数の場合には講義の内容と形式が変更されることがあるので、あらかじめ了承願いたい。その場合には、討論が中心の授業になる。なお、3分の2以上の出席を評価の前提条件とすることは言うまでもない。前期定期試験(80%)・小論文(20%)の実施により、総合的に成績を評価する。
授業評価アンケート
フィードバック・
受講生へメッセージ
条件に恵まれ、多岐にわたり討議できたので授業としては意義深いものと思っていたが、授業評価の結果から履修者との温度差はあると認識した。担当科目の評価は木曜日の3限・4限共に学内全体の科目平均すれすれであり、反省しきりである。
単位互換
特記

授業計画
第1回 内容
社会科学概論とは何か:社会科学の方法と対象と必要性
講義計画と内容の説明
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:社会科学の対象領域は何かについて考えておくこと
復習:「講義の計画と内容」を熟読すること
授業実施特記 オリエンテーション
第2回 内容
社会科学の方法の基礎1:演繹法と帰納法・「価値判断論争」

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:演繹法とは何か、帰納法とは何かについて考えておくこと
復習:演繹法の弱点と帰納法の特徴を熟考すること
授業実施特記
第3回 内容
社会科学の方法の基礎2:構造分析と歴史理論分析を統合する総合アプローチ
社会科学の方法の基礎3:自然科学と社会科学の方法の重層性(ネットワーク)

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:「歴史と構造」とネットワーク化について考えておくこと。もし可能ならば、人体における「脳と臓器(のメッセージ物質)の情報ネットワーク」(支配従属関係を超えるフラット化社会の根幹を支える原理)について考えておくこと
復習:「自然科学と社会科学の方法の重層性」(「相関ネットワーク」)に関するレジュメを再読、熟考
授業実施特記
第4回 内容
社会科学の方法論1:経験論(1)
市民社会論の源流:西欧の近代市民社会思想(ホッブス、ロック等)

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される「経験」に関するレジュメの読解
復習:「経験」について改めて意識して考えること
授業実施特記 「経験」について各人の見解を求める
第5回 内容
社会科学の方法論1:経験論(2)
市民社会論の源流:続・西欧の近代市民社会思想(ルソー、スミス等)

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される「社会契約」に関するレジュメの読解
復習:ルソーの作品とその個人史および歴史的環境との関係について考察すること
授業実施特記
第6回 内容
社会科学の方法論1:特論
市民社会論の継承と転回:ヘーゲルとマルクス

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布されるマルクスとヘーゲルの功罪に関するレジュメの読解
復習:マルクスの歴史理論を分析すること
授業実施特記
第7回 内容
社会科学の方法論2:可知論・対・不可知論(不確定性原理/不確実性)

授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される不確定性原理に関するレジュメの読解
復習:レジュメの再読、熟考
授業実施特記
第8回 内容
社会科学の方法論3:記号論
社会科学の方法論4:現象学
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される精神医療に関するレジュメの読解
復習:精神医学における現象学的手法に関するレジュメの再読と検討
授業実施特記
第9回 内容
社会科学の方法論5:複雑系・初期化・ネットワーク化


授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される「単純系・複雑系」に関するレジュメの読解、熟考
復習:「自然人」をめぐるルソーの見解と配布資料の主人公の見解の相同性について沈思黙考
授業実施特記 主題に関する各人の意見を発表
第10回 内容
現代市民社会論1
市民社会とは何か:市民・市民社会・市民社会論
[資料](M.M.ハワードによる)J.L.コーエンモデル(市民社会の概念図)の超克




授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:「市民社会とは何か」について自らの見解を確認しておくこと
復習:コーエンモデルの欠陥は何かについて考えること

授業実施特記
第11回 内容
現代市民社会論2
現代市民社会の分析方法①:歴史理論的アプローチ(西欧と日本の市民社会)
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:江戸幕藩体制の内部における「市民社会」の萌芽、あるいはイギリスと日本の地政学的位置について思いを巡らせておくこと
復習:江戸幕藩体制の内部における「市民社会」の萌芽に関する担当者のレジュメを再読、熟考すること
授業実施特記 日本の地政学的位置について各人の見解を確認し、日本社会の独自性を意識すること
第12回 内容
現代市民社会論2
現代市民社会の分析方法②:公共空間的アプローチ
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される市民社会の空間的処理に関するレジュメの読解、熟考
復習:公共空間的アプローチの限界を考える
授業実施特記
第13回 内容
現代市民社会論2
現代市民社会の分析方法③:統合アプローチ(歴史における「三審級の重層的同時決定/情報のネットワーク化」)
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される情報のネットワークに関するレジュメの読解、熟考
復習:社会科学の現象に対する分析方法としてのネットワーク化について考えること
授業実施特記
第14回 内容
現代市民社会論3
①フランス社会学・ドイツ社会哲学・ハーバーマス・コーエンモデル
②日本の戦前・戦中・戦後の市民社会論
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:あらかじめ配布される現代日本の市民社会論に関するレジュメの読解、熟考
復習:日本における戦後市民社会論の限界とその超克を探ること
授業実施特記
第15回 内容
現代市民社会論4
IoT、ビッグデータ、AI時代における市民と市民社会の役割:グローバル資本主義の調整機能としての市民社会
授業時間外における学修(予習・復習等) 予習:グローバル市民社会に関する自分の見解を整理しておくこと
復習:討論会を振り返り、沈思黙考
授業実施特記 テーマに関する討論会 課題:小論文の提出