最終更新日:2017/02/02
Syllabus
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概要
対象年度 年度 2017 (週1コマ)通年 開講時限 火5
開講学部・学科等 大学院
科目コード 071002400 科目ナンバー
授業名 文学・文化論講読3
英文授業名 Readings in Literature and Culture Studies 3
担当教員 濱中 修

授業形態 講義
e-learning利用 その他:
担当形態 単独
関連する授業
当科目履修前に履修して
おくことが望ましい科目
特記事項なし
後続関連授業
教職課程科目
テーマ・キーワード 中世文学  宗教  芸能

授業の概要・ねらい 中世の文学を、宗教との関わりで読み解いていく。
現在の中世文学研究の第一線では、文学と宗教との関わりを従来以上に深い部分で捉え直す作業が試みられている。
中世文学の舞台となって文学に登場した寺院、神社をはじめとする宗教的空間を、当時の宗教的知見と照らし合わせることで、従来は見えなかった事情が判明しつつある。
本講読では、そのような学界の動向にも目を配り、中世文学研究の最前線の様相を提示することで、受講者の関心に応えていきたい。
到達目標 日本の中世文学に関して専門的知識を獲得する。
教科書と準備するもの 講義中、適宜プリントを配布する。
参考書 濱中修『女神たちの中世物語』(新典社)
徳田和夫編『お伽草子事典』(東京堂)
『日本歴史地名大系』(平凡社)
松本隆信編『室町時代物語大成』(角川書店)
『大正新修大蔵経』(大正新修大蔵経刊行会)

評価の基準 授業態度およびレポートを総合的に判断する。
具体的評価方法 授業態度30パーセント、レポート・定期試験70パーセント。
授業評価アンケート
フィードバック・
受講生へメッセージ
アンケートを参考にして以後の講義に活用する。
単位互換
特記 特記事項なし

授業計画
第1回 内容
「厳島と中世文学1」 清盛が篤く厳島神社を崇敬したことから、平家物語にも
厳島神社がしばしば登場する。平家の権力奪取と厳島信仰がいかに関係したか。清盛にとって巫女「内侍」はどのような意味をもっていたのかなどを考察する。
第16回 内容
「長谷寺霊験記を読む1」長谷寺の縁起中、最も根幹をなす本記験記を読むことで、中世の宗教思想と文学を考える。長谷の地は万葉集以来、隠国の長谷と呼ばれてきたが、その秀麗な山々に囲まれたこもりくの地に、観音が出現したことの意味を検証する。
授業時間外における学修(予習・復習等) 厳島神社に関して予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 長谷寺について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第2回 内容
「厳島と中世文学2」 平家物語には、空海が厳島神社を再興するように清盛に
告げたとの記事があり、また長門本には、空海の密教宣布を厳島の女神が擁護し
たとする。弁才天信仰をも含めて、密教との関連で厳島信仰を考える。
第17回 内容
「長谷寺霊験記を読む2」源氏物語や更級日記に描かれているように、長谷寺は女性の信仰篤く、数多くの女性の参詣者を集めていた。それはなぜか。本験記にはこの謎を解くヒントが記されている。長谷寺の観音信仰を女性論の見地から考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) 空海に関して予習をすること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 長谷寺について復讐すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第3回 内容
「熊野と中世文学1」平家物語にとって聖地熊野は決定的に重要な役割を果たしている。清盛の権力奪取にも関係し、またその没落にも決定的な要素となった。
平維盛は熊野沖に入水自殺を遂げている。熊野の重要性を平家物語に探る。
第18回 内容
「長谷寺霊験記を読む3」観音は慈悲深い菩薩と考えられている。ところが、
本験記には実に多くの反対の一面を示す観音説話が語られている。
この謎を長谷寺の特殊性と観音信仰の普遍性の両面から考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) 熊野神社に関して予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 長谷寺を観音信仰の観点から講義をまとめること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第4回 内容
「熊野と中世文学2」本地物語の代表的な作品「熊野の本地」は、その苦しむ神の思想によって、中世宗教思想の基層部分を形成している。餓鬼阿弥の身となった小栗判官が復活を遂げ、篤い観音信者の補陀洛浄土への出発地でもあった熊野の聖地性を探る。
第19回 内容
「春日権現験記を読む1」奈良の春日大社は、権力者藤原氏の氏神として、中古・中世を通じて国家に重きをなした神社であった。その神聖感は若宮おん祭りなどを通じて現代にも受け継がれている。春日社は神罰を与える神として知られているが、その理由を考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) 熊野の本地に関して予習をすること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 春日神社について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第5回 内容
「鎌倉と中世文学1」鎌倉周辺には江ノ島をはじめ、鶴岡八幡境内や銭洗弁才など弁才天を祀るところが多い。福神のひとつとして知られる弁才天であるが、鎌倉幕府の膝元で、そのような庶民的信仰のみでこの女神が祭られたとは思われない。鎌倉の権力と弁才天との関係を考える。
第20回 内容
「春日権現験記を読む2」平安朝の昔から春日社は芸能と関係が深く、中世の能楽の発生にも深く関与していた。験記の中の芸能関連の記事を読むことで、春日社と中世芸能との結びつきを考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) 鎌倉という都市に関して予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 春日神社芸能について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第6回 内容
「鎌倉と中世文学2」鶴岡八幡、極楽寺、称名寺などを取り上げ、中世鎌倉の信仰と文化の意外な一面を考える。 第21回 内容
「神道集を読む1」神道集は、天台系統の神道論の立場からする縁起である。つまり神仏習合時代の中世の神話であり、古代神話とは一線を画した作品である。
ここでは伊豆箱根の二所権現を、曽我物語などとも関係させながら考察する。
授業時間外における学修(予習・復習等) 鎌倉の主要な寺社について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 神道集について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第7回 内容
「稲荷信仰と中世文学1」源平盛衰記には、清盛の権力奪取に稲荷山のダキニ天が関わったとの記事が載る。中世の宗教界を席巻したダキニ天信仰の実態を探る。 第22回 内容
「神道集を読む2」神道集には数多くの関東の神社の縁起が収録されている。
そしてそれらの縁起にはある種の傾向が読み取れ、それは関東の歴史と風土と無関係ではないのである。神道集の中に関東の特異な風土を読み解く。
授業時間外における学修(予習・復習等) 稲荷信仰について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 神道集と関東の神社に関して講義内容をまとめること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第8回 内容
「稲荷信仰と中世文学2」太平記が記す後醍醐天皇の建武政権内で、天皇の護持僧として絶大なる信任を得ていた文観もダキニ天を駆使していた。中世における
宗教と権力の関係をダキニ天を例に探る。
第23回 内容
「渓嵐拾葉集を読む1」南北朝期の天台の学僧光宗が著した「渓嵐拾葉集」は中世仏教界の百科事典のごとき口伝書であり、中世の宗教文学の基層部分を解き明かす書でもある。ここでは、如意宝珠が中世仏教界及び権力構造の中で担ったシンボリックな意味を探る。
授業時間外における学修(予習・復習等) 特記事項なし 授業時間外における学修(予習・復習等) 渓嵐拾葉集について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第9回 内容
「長谷寺と中世文学」長谷寺は平安朝以来、特に女性たちから篤い信仰を寄せられた寺である。その優しい長谷の観音様が、寺の縁起である長谷寺験記では意外な一面を見せている。長谷の聖域を探る。 第24回 内容
「渓嵐拾葉集を読む2」仏舎利は釈迦の身体や悟りそのものを象徴する呪宝として中世には重んじられた。特に寺院の開創説話には舎利が登場することが多く、本書にも多数の記述がある。舎利信仰の一端は能「舎利」にも描かれ、権力者にとっても舎利は重要視されていた。渓嵐拾葉集所載の舎利の伝承から、中世の神聖観を探る。
授業時間外における学修(予習・復習等) 長谷寺について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 舎利信仰について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第10回 内容
「高野山と中世文学」空海が開いた密教は、その後の日本文化・宗教に決定的な影響を及ぼした。その宗教活動の聖地として開かれた高野山の開創神話は、宗教の聖性の構造を考える上でのヒントが多く秘められている。丹生明神などの地主神との関わりを中心に高野山の聖地性の問題を考える。 第25回 内容
「参詣曼陀羅を読む1」中世に数多く作成された寺社の参詣曼陀羅は、聖地を俯瞰的に視覚化し、またそこに秘められた神話と伝承を読み解くヒントにあふれている。まずは、参詣曼陀羅図の概観を講ずる。
授業時間外における学修(予習・復習等) 高野山について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 参詣曼荼羅に関して予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第11回 内容
「東寺と中世文学」空海が開いた東寺は、空海の理想とする密厳浄土を形成している。パンテオンに収められた仏像を検討することで、日本文化の深層を流れていた宗教思想を考える。 第26回 内容
「参詣曼陀羅を読む2」清水寺は中世でも現代でも人気の高い寺院である。都の一角に位置し、重要な寺でもあったことから歴史上でも文学上でも逸話は多い。この人気寺院の中世における姿を検証する。
授業時間外における学修(予習・復習等) 東寺について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 清水寺に関して予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第12回 内容
「比叡山と中世文学」都に近い場所にある比叡山は、平安朝以来、貴族社会に多大な影響力を持っていたが、その傾向は中世においてもしばらくは続いた。
比叡山の開創譚を軸に、地主神と天台仏教との関係を考える。
第27回 内容
「参詣曼陀羅を読む3」紀伊半島の最南端、那智は那智滝を中心にした信仰を形成している。中世においては上皇をはじめとした貴族や庶民の、蟻の熊野詣でと称される参詣熱を集めた聖地となっていた。補陀洛渡海に代表される熱烈な観音信仰や、平家物語との関わりを那智参詣図に探る。
授業時間外における学修(予習・復習等) 比叡山について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 熊野那智信仰について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第13回 内容
「伊勢神宮と中世文学」伊勢の神に奉仕する斎宮の存在は、伊勢と天皇家との関係の基軸である。その斎宮と業平との恋は有名だが、鎌倉時代にも類似の事件はあり、「とはずがたり」などに記されている。中世における伊勢神学をも踏まえて、信仰と権力と美学について考える。 第28回 内容
「参詣曼陀羅を読む4」須磨寺は、平家物語中の哀話である平敦盛の悲劇の舞台となった寺である。また須磨は源氏物語や、能「玄上」の舞台でもある。これらの史実や文学が参詣図にいかように消化されているかを検証する。
授業時間外における学修(予習・復習等) 伊勢神宮について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 須磨寺について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第14回 内容
「気比神宮と中世文学」気比神宮は、平家物語にも登場する北陸の大社であるが、やはり中世後期の物語には、天皇家にも関わる神の縁起譚が載る。地方の信仰と権力との相関関係を考える。 第29回 内容
「参詣曼陀羅を読む5」吉野曼陀羅は、吉野金峰山の蔵王権現を中心に描かれた参詣曼陀羅図である。金峰山は中世以来、現在に至るまで根強い民間信仰に支えられた修験道の中心地である。この聖地を描いた曼陀羅図を読み解くことで、神仏習合時代の信仰を探る。
授業時間外における学修(予習・復習等) 気比神社について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 吉野の信仰について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし
第15回 内容
「中世の養蚕神話」神社の信仰には、人間の精神と物質にまつわる様々な活動が
背景にある。筑波山の蚕影神社の縁起を素材にして、中世日本における産業と
信仰との関わりを探る。
第30回 内容
「参詣曼陀羅を読む6」竹生島は琵琶湖北方に浮かぶ小島であり、日本三弁才天の一つが祭られている。平家物語にも登場するこの弁才天を取り上げて、中世日本における女神信仰について考える。
授業時間外における学修(予習・復習等) 養蚕神話について予習すること。 授業時間外における学修(予習・復習等) 竹生島信仰について予習すること。
授業実施特記 特記事項なし 授業実施特記 特記事項なし